軽①
2年前、それまで14年間乗っていた普通自動車がもうすぐ7回目の車検を迎えることになった。
6回目の車検の時には走行距離はすでに10万キロを超え、オイル漏れの危険性もあるので次回車検時には現状維持に随分と費用がかかるだろう、と予告された。
さすがにそろそろ潮時かと思ったが買い替えるにも乗りたい車が見つからなかった。
この際だから維持費のかからない軽自動車にしてみようかと思い立って検討を始めた。
何しろ生まれてこのかた軽自動車なんて考えたこともなかったからまるで情報がない。
で、いろいろ探しまわって決めたのがスズキのワゴンRだった。
残価設定ローンが使えたのでせっかくならと新車で購入した。
驚いたのはその税金。たしか7200円だかで普通自動車の5分の1だ。
それにこのご時世で車庫証明もいらない。
燃費もよく高速代も割安だ。
なんで軽自動車はこんなに優遇されてんだ?こんなに差があっていーの?とも思った。
昔の軽とは違い、その室内の広さにも驚かされた。
さすがに助手席との距離は近すぎるのは否めないものの天井高や後部座席の足元の空間などもしかして普通車より広いんじゃないか、という印象だった。
さらに13年前にはなかった機能も満載だった。なにしろキーをささなくてもドアの開閉が可能なのだ。エンジンもかけられる。いまとなっちゃ当たり前だけど、ちょっとリッチになった気分で嬉しかった。
こんだけいいことずくめなのでもっと早く軽に切り替えれば良かったと後悔するほどだった。
毎週の買い物をするときも大活躍だ。
混み合う駐車場でも軽専用のスペースに駐車できちゃったりするから得した気分になる。
荷物の搭載力も申し分ない。
買い物時の積載はもちろんのこと、後ろのシートを前に倒せちょっとした家具なんかだって積める。
なんたって「花嫁さん」を乗っけた経歴もあるのだ。
(実はマイハニーと結婚したのも2年前で、その時、教会での結婚式を終え、披露宴をしにホテルへ移動するとき、新郎自らウェディングドレスを着たままの新婦を後部をフラットにしたワゴンRに乗っけて輸送したのである。
― ウェディングドレスがかさばるからね ―
ホテルに着いたときのスタッフの微笑ましい?顔が今でも忘れられない。)
そんなんだから軽との新生活も順風満帆のように思えた。
ただ1つのことを除いては・・・。
それを見て見ぬふりをし、見ても事実を否定し、なんとか自分を偽り、だましだまし軽自動車に乗り続けるのだった。