樹氷 ~天国と地獄~
山頂駅到着。
展望台に上ってみる。
ヒュー!(*^0゚)v すごいね。自然ってのは。
なんという壮観な眺め。
雲の上に山が出ているからまるで雲の上にいるようである。
天国かあ?ここは?
そして・・・・
樹氷だあ!
自然が作り出す造詣の美しさに心を打たれ暫く感慨にふける。
残念ながら先日の雨で少し崩れてしまったそうだ。
それに晴れていれば、きっと空の青とのコントラストでもっと樹氷が際立つのだろう。
それでもこの眺めは壮観だ。
いつまでも記憶にとどめておきたい。
そして夕日が沈む直前の光景。
真っ赤までは行かなくとも十分に美しい。
いやあ・・・・。
来てよかった。
でかし!
いったい何メートルつもってんだろ?
埋もれている地蔵さんと。
お地蔵様の頭によりかかるとはなんたる罰当たりものか。
だってえ・・・。雪で埋もれてなけりゃできないポーズだからせっかくと思って・・・。
天国なのはここまでなのだった。
さて、陽も沈みかけているのでそろそろ下りに入ろう・・・。
と思って例のザンゲ坂手前でスキーをセットしながら先を見ると・・・
地獄が待っていた。
ちょっと!
これヤバいんじゃね?
すげー急坂なんですけど。
これぐらいの角度ならさっきもすべったかもしれないのだが、ここは明らかに・・・
幅がない。
コース脇に赤いロープが張られている。
これ、つまり
「コースアウトしたらあかんで。転落やで」
ってことではないのか!?
いやいや。
まっすぐ下らなければいーのだ。ハの字を駆使して斜めに斜めにすべっていきゃどーにかなるのだ!
そう決め込んで早速スタートする。
あかん。
スピードがあ・・・。
どんどん増してくるぅ~。
3回めのターンだったか、どんがらがっしゃ~ん!
ロープに突っ込んで転倒。
マイハニーは怖がって下りてきやしない。
うーむ。
人が降りてこないのを見計らって再トライするものの、今度は2回ターンぐらいで転倒。
今度はコースのど真ん中だ。
あわててストックを拾って端っこに移動する。
あかん。
こりゃあかん。
どーしたものか・・・・。
軽やかに下って行く上手なスキーヤーを呆然と見送りながら暫くしゃがんだままだった。
明らかに自分より年配の方々が涼しい顔で通り過ぎていくのを眺めながら・・・
こりゃやはり無謀だったのだ。
「無謀松の一生」だったのだ。
と後悔し、途方に暮れていた。
マイハニーに至っては完全に白旗状態でスキーを手に持って尻すべりをしているのだった。
「ま、まさかあれで下までくだるわけではあるまいが・・・」
くそー。
と、そのとき!
なんと、ゆーっくり下ってくる人がいるではないか!
どーやってんだ?と身を乗り出してまじまじと観察すると、
ハの字の片側が完全にコースに対して垂直になるようにしてブレーキングしながら下っているのだ。
なるほどー!
これならスピードをセーブしながら行けそうではないか!
やってやる~。
再トライ!
お。
おお~。
行ける、行けるぞー!
それでもスピードは上がるもののコントロールを失うほどではない。
まだ行ける、と余裕を感じ始めたころ、平らなスペースへ到達したのだった。
やったあ!
ザンゲ坂を乗り切った!
だがマイハニーのほうは一向に降りてこない。
暫くして平らなところまで降りてきたが、どーにもこーにももう足が限界らしい。
ならばすぐ近くにリフトがあるのでそれに乗って帰るか?と聞くと「乗らない」という。
「じゃあ、がんばって行こうか」と励ますものの、平地でもうかない顔をしていて相当まいっているようだった。
そして岐路となるユートピアゲレンデまで来たときに
「もうダメだ。歩いて帰る」
と言い出した。
えーーっ!?ここから歩いて帰るってそっちのほうが辛いやんけ。
滑ったほうが早い、と言うと
「靴脱いで靴下で歩く」
ときた。
女性は感情的になると男性には理解のできない内容の発言をしまくるが、だからといってそこで論理的に攻めてはいけない、
と、何かの本で読んだことがある。
なのでここは冷静に対処しなければいけない。
どう対処すべきか思案しようとしたら、なんと
スノーモービルに乗ったあんちゃんが現れた。
こりゃもうこれに頼るしかなかろう。
「すみませーん」
と声をかけると「どーしましたあ」とスノーモービルと並走していたスキーの兄ちゃんが来てくれた。
事情を話すと
「ではスノーモービルで送りましょう」
と言ってくれた。
おー。
兄ちゃんが天使のように見えた。
どーやらお兄ちゃんたちはナイターに備えてか、コース整備やら点検等をしながらあたりを回っているようだった。
そのついでに降ろしてくれるみたいだ。
オレも便乗しようか、と一瞬思ったが、後ろに乗れるのは一人らしい。
なのでオレは一人でくだることに。
「百万人ゲレンデのところで待っていてください」
と言われ、とりあえずそこまで一人で行った。
暫くすると、スキーのお兄ちゃんが来て
「では途中まで一緒に行きましょう。ついてきてください」
「つ、ついてきてください~?」
と思って体制を整えようとしたら・・・
転んだ。
でもこれで超初心者であることがわかってもらえてよかった。案の定、
「ゆっくり行きましょう」
と言ってくださった。
ハの字でターンしながらのんびり下ろう、そう思ったが予想以上に急坂だったためコントロールを失った。
もはやターンできる速度ではなく、ハの字なんだけど直滑降になった。
ハの字直滑降だ。
きっとはたから見たら大してスピードは出ていないのだろうけどわたしにとってはとんでもないことになっていた。
ときどき跳ね上がるではないか!
とにかく下半身をふんばる。
股のところがピキピキいってそうなんだけど、ここで力を緩めたら絶対転倒する。
えーーーーーーーーーーーーーーーーーいっ!
耐えろ、耐えろーーーーーーっ!
耐えたあ・・・・。
ふ~。
なんとか窮地を乗り越えた。
そこからはもう自分が上達した気分になってゆうゆうとすべることができたのだった。
ながーい距離を一人満喫しながら下っていくと間もなくスキー教室ですべった馴染みのあるコースが見えてきた。
もう人も少なくゲレンデを独り占めしているようだった。
やがてふもとのロープウェイの駅が見えてきた。
マイハニーの姿も見える。
きっとこの悠々とすべる雄姿をカメラに収めてくれるだろう。
と、思ったらカメラを構えている様子はなかった。Σ( ̄ロ ̄lll)
合流後、話しを聞くと、途中でスノーモービルを降ろされそうになったが「無理です」と言ってふもとまで送ってもらったのだと言う。
やっぱ夜行バスがこたえたか、と聞いたらそうではなく、自分の体力のなさが原因なのだと言っていた。
まあなんにしても無事に帰れてよかった。
「せっかくスキーをやるのだから朝から蔵王に入りたい」
そう言っていた彼女がすべった時間は結局スキー教室の2時間だけなのだった。
一方、今回の旅行でおまけのように捉えていたスキーをわたしはものすごく楽しんでしまったのだった。
なんか申し訳ない気分だった。
でも。
んー。スノーモービルに乗れる経験なんてなかなかないよなー。
それはそれでよかったんじゃ・・・・。
↑「そりゃそもそも午後から出かけるのが無理だったんじゃ・・・」「スノーモービルに乗りたい」などなど、いろいろと思われたかたは、是非押してくだされ~(ノ^∇^)ノ