雨の中の撤収
「さむい、さむいよ~・・・・」
昔、近所の子供がそう叫んで登校を拒絶していることがあったが、その声を空耳で聞いた気がした。
・・・・寒い。
夢うつつの中「持ってきたダウンを着なきゃ」と心の中で何度も言うのだが、そのまま眠ってしまっていて結局寒さで目が覚めたのだった。
トイレに行きたい。膀胱が限界に達しているのがわかる。けど寒くて出たくない。
ポツリ、ポツリ・・・。
「?」
うそでっしゃろ?うそでおまんがな。だんな、冗談は顔だけにしておくんなせー。
確か天気予報では雨は午後からなのでは?
テントの外では倶楽部員の話し声が聞こえる。
いかん。さすがにもう起きねば。
寒くてしょーがないが、ありがたいことに薪が燃えている。toruさんが火を熾してくれていた。
トイレに行ったあと暖をとる。
ふー。
雨か。
まーでも鳥のさえずりもあるし、空も明るいからすぐに止むんじゃね。
とりあえず朝食だ。
昨夜からそそる匂いを放っていたtoru氏渾身の作、チリビーンズである。
これに今日はとうがらしを加えて辛さを調節するのだそうだ。
維水志、塩辛いのはNGだがそれ以外はむしろ大好物である。頭皮から汗が出るぐらいのが好き。
それにしてもこんな本格的な鍋まであるとは・・・。まるでドラえもんの道具箱だわね。
これをパンに乗っけて・・・。
超うまい!辛さもバッチリ。
残りそうだったから余りを心配して全部食っちゃおうか、と思ったのだけれど、彼らはこれからまだ連泊するのということを忘れていた。それほどうまい。また食べたい。
余りはkazu隊長と部下一行へと引き継がれた。
そしてこれまた隊長お勧めのクラムチャウダーをいただく。ちょっとお湯が多くて薄まっちゃったけど、とろみが体をあっためてくれてすごくありがたかった。また貝だけどね。
さらにtoruさんが持ってきたドリップ式のコーヒーもいただく。
あー、維水志、今回は皆様の愛を受ける一方でした。本当に申し訳ない。
3回目にして持ってくるべきものとか、やっと学んだ気がしますわ。
そろそろ「おんぶにだっこに高い高~い」を卒業せねば。
「おんぶにだっこにいー子いー子」ぐらいにしておかないと嫌われそうである。
贅沢な朝食を堪能しながらまったりしていると、雨がほぼ止んだ。
「よしっ!この隙に一気に撤収してしまえ!」
と思ったのだが、この時間が贅沢過ぎて動く気にならないのであった。
今思えばそれがラストチャンスだった。
そこからはもうずーーーーーーーーーーーーーっと、
雨。
しかも激しい雨。
やむ気配は微塵も感じられないので意を決して撤収に入る。
まずはテント内の整理をし、toruさんのタープの下に中身を避難させる。ありがたや。
重装備は身につけてしまわないと邪魔になる。動きが妨げられるし暑くなって汗までかいてくる始末だがしょーがない。
一方、カッパのフードは持ってきて正解だった。さすがにメットしながら作業するわけにいはいかない。
次にフライシートを残して室内だけたたもうとするのだが、まあ結局濡れちゃうね。
びっしょびしょのテントをなんとか収めてパッキングに入る。
ドラムバッグの中身は全部ビニールに入れる。バックパックは防水仕様だが一応百円カッパでおおう。タンクバッグが・・・
邪魔だ。バックパックに収めてしまいたいがそれだとカメラもしまうことになる。
むー。
これから勝浦タンタン麺も撮影しないといけないし・・・・。
悩んだ末にそのままにした。せっかく防水カバーも作ったことだし。
だが、
写真はもうないのである。
上のチリビーンズでおしまい。
なんとか全てが片付け終わり、チェックアウトの11時前には撤収完了となった。
その日は休日。タンタン麺も昼を過ぎると店が混雑することが予想されるので12時前の到着を目指す。
場所は隣街の勝浦にある。
恐怖の直角坂道を突破して国道に出て暫くすると、先頭の二人が信号待ちでなにやら密談を交わしている。
そしてデニーズへ入っていくではないか。
中に入って事情を聞くと、目的地をこの近所のタンタン麺屋に変更するのだという。そのための小休止だ。
それも嬉しいことに維水志の帰りを考慮してくれていたのだった。私の場合、帰るにはまたこちらに戻ってくることになるわけで。ありがたい配慮ですなー。
私としては、自分は後もう帰るだけなので、できるだけ皆さんの次の予定地に近いほうがいいかと思ったんですけど。
美しき倶楽部愛ですな。
で、デニーズに入ると、千葉のデニーズは親切だよね、タオルを貸してくれたよ。
濡れネズミ野郎が3人も入ってきたのに嫌な顔一つせずに、だ。それでもオーダーは「フリードリンク3つ」としょぼくれている。ごめんなさいね。でも心まであったかくなりましたよ。
スマホで検索し、選んだ店は「江ざわ」というところだった。
そこから10キロぐらい北上したところにある。
そうと決まれば早速出発だ。
防水グローブは手が湿っているとなかなかはめられない。毎回みんなを待たせてしまう。下にもう一枚薄手のグローブをはめるのがいいだろう。
さて、ここで必殺技のペットボトル防水カバーを装着した。いよいよ本領発揮だぜ。
と、思いきや、
走っているうちにシフトチェンジする左足のほうがだんだん上にずれてきてしまって完全にオーバーパンツの下に隠れてしまっていた。
そして靴の中がぐちょっとした。
おお、でも右側はだいじょぶじゃんか。ってことはそれなりの効果があるんじゃんか。
と、そのときは思った。
雨のためか休日なのに交通量も少なく順調に走行。やがてそれらしき店が見えてきた。
?
え?並んでる?もしかして?
ほったて小屋に近いような店舗の、これまた舗装されていない駐車場はクルマでいっぱい。
そしてあろうことか、店がまだ開いていないようで、屋根のないところに人々が列を作っていた。少なくとも10人は並んでいる。
え?なんでまたよりによって・・・。道は全然混んでなかったのに。
駐車スペースを探して敷地内に入り、バイクを降りると隊長が
「並ぶ?」とおっしゃるから
「並ばない」と即答する。
(ちなみに、このときの維水志がすごい冷たい目をしていたらしく、恐怖を与えるほどだったらしい)
いや聞かれるまでもなくノーだろう。さんざん雨に打たれてなお、いつ開くかもわからん店の前で雁首そろえて突っ立ているわけにはいかない。
精神衛生上よろしくない。
こちらに向かってくる途中にうどん屋などもあったんで適当に寄ろう、ということになった。
ちょっと戻ると定食屋みたいのもあったが駐車場が見当たらないのでスルー。
来た道を半分ぐらい戻ったところにとんこつラーメン屋があったんでそこに決定。
もう何でもよろしい。それよりも暖をとりたい。お腹も満たしたい。
入った店はとんこつラーメン屋なはずなのだが、三人のオーダーは結局、
隊長:カモラーメン(醤油ベース)
toruさん:味噌バターラーメン(味噌ベース)
維水志:かつどん
である。
写真なし。気力なし。
ここでも帰り際、お店の人が「雨の中大変だね」と、濡れネズミに暖かい声をかけてくださった。
「寒いでしょう」「いえいえ、神奈川とかに比べればこっちはあったかいです」「へー」
座席を濡らしてしまい、すみませんでした。
ガチョウ倶楽部、今回はここで解散となった。
toru氏は九十九里へ、kazu隊長は部下の方々と共に勝浦でコテージキャンプ、維水志は帰途に付く。
皆さん、雨で大変でしたね。
くれぐれも道中お気をつけてください。
ではでは。
浜金谷までの道を調べないといけないと思っていたが、この道をそのまままっすぐに行けばいーのだった。
長い狭い街道で「長狭道路」というのか、その名の通り、ほとんどクルマがいない。
60キロ巡航で快適に走る。
靴の中をのぞいて・・・・。
くそー。
結局、防水カバーなんか役に立っていなかったのである。
こんなことならコンビニ袋を足に履いてから靴をはいときゃよかった・・・。
後の祭りであった。
↑最後まで読んで頂きありがたき幸せでごんす(@^0^@)
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