昔の職場の知り合い
そーいや北海道旅行の翌日、昔の職場の知り合いとの飲み会があったんだった。
昔の職場、つまり学習塾なのだが、ピーク時分校を10個ぐらい所有する、神奈川県内ではちょっとした大手塾だった。
まだ塾が淘汰されずに氾濫していた時代である。
そういった塾の教師陣はどこもだいたい変わらず、フルタイムで働く社員、いわゆる「専任」と、アルバイトで働く大学生らの「講師」で構成されていた。
アルバイトの講師や事務員などは、たいていがその校舎の卒業生だった。
そうなる経緯は、「自分が習った先生にあこがれたから」的なものがほとんどであるから、自分の卒業校だけにそこの専任や先輩講師との息もぴったりで教師間のコミュニケーションは抜群だったと言える。
新人講師の教え方なんかはあこがれてた専任教師と瓜二つで、まるでコピー人間みたいなのが多く製造されていたというのはよくある話だった。
だから、それぞれの校舎の色が独自に現れていたものだった。
そして、そこで教師としての才能を開花させるとそのまま専任の道を歩むものもいたが、それは稀有な例だ。
まあたいてい優秀な講師学生は、教師としても一目を置かれるだけでなく、社会人としても立派な若者が多いので、大学卒業後はもっとちゃんとした一流企業へと就職していくのがお決まりであった。
今回、横浜で一緒に飲むことになったのは、皆ある校舎のメンバーつながりで、当時の専任である維水志を含む二人と、学生講師だった二人の計四名である。
元講師が久しぶりに帰省をしたので、是非みんなと会いたいということで声掛けをしてくれたのだった。
当時若干二十歳だった元講師の二人もいまや四十代。
当時も歳の差は10前後ぐらいだったわけだから、いやはや、自分も歳を取ったわけだ。
その二人は高校も湘南エリアのすぐ海の近くにある公立進学校の出身だったからかなり優秀。
やはりバイト卒業後はしっかりと就職をした。
一人は超大手の保険会社であり、もう一人はなんと検事である。
一方、我々元専任二人は相変わらず塾関係の仕事をしているわけだ。
なんかねぇ・・・。
そんな社会的に優れた方々とこうして酒を交わすことができるだなんて、ちょっと恥ずかしい気もするのだった。
ちなみに検事くんが発起人。
彼が選んだ店は横浜ベイクォーターにある、テラス席がウリのオイスターバーである。
いい眺めだ。
だが結論から言うと、とても対応が残念な店だった。
景色の良い席がたくさんあるにもかかわらず、通されたのは端っこの喫煙者の隣である。
「あっちの見晴らしがいいとこへ変えてくんないか」と要求すると、先ほどの突然の豪雨で布製の椅子が濡れているのだという。
だが、これから座る席の椅子がプラスチック製だかなんだかわからんが、これなら使えるわけで・・・。
「じゃあこちらの椅子をそちらへお持ちしましょうか」ぐらい言えないんか?
そしてその態度がそっけなく、オーダーを取る際の口調も滑舌が悪く、何を言ってんのかまるでわからん。
オイスターバーだけにそりゃ牡蠣は美味いが、風下で喫煙者の煙を一方的に受けながら歓談をする羽目になった。
まあ会話が楽しけりゃそれでいーわけだが、なんともザンネンな感じだった。
個人的にこの店に来ることは二度とないだろう。
それにしても検事くんの話は面白い。
普通じゃちょっと聞けない話ばかりでいろいろと突っ込んで聞いてしまった。
くそーな店の料理も一通り出たところで店を換えることにした。
ビルの谷間に虹。
なかなかよろしい。
二件目も同じベイクォーターにあるテラス席があるお店。
いやー、打って変わってこちらは雰囲気が良い。
出てくる料理の順番はめちゃくちゃだったが。
料理が全部出そろう前に飲み放題の飲み物のラストオーダーを取りにきたり、と・・。
それ以外、料理の味とかはちゃんとしていた。
まあ横浜なんてのは「横浜」っていう地名だけでこんな接客でも成り立つわけだ。
横浜という、雰囲気を楽しめればそれでいい、というわけだ。
ありがたや、ありがたや。
楽しい時間はあっという間に過ぎた。
今は地方勤務の検事くん。
大型バイクを買ったら、彼がそちらへいるうちに会いに行きたいものである。
結局、大型バイク買うのかな・・・?
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