顧客の晴れの日
もう半年以上前の話。
昔の顧客の結婚式に招待された。
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彼女、緑山(仮名)は維水志の、もう10年以上前の顧客なのだが、今の仕事の最初の顧客の一人でもある。
開業当初、顧客の数はごく僅かで、いつまでこの仕事を続けられるかわかんないような状況が続いていた。
そんな中、前の仕事の縁もあり、最初の顧客となってくれた緑山は維水志を信じ、自分の目標を達成するまで最高の顧客でいてくれたのである。
あれから早15年、維水志が今も仕事を続けていられるのは、彼女が最初の顧客でいてくれたことが大きな要因の一つだったと言い切れる。
「彼女が顧客でいるなら・・・」と、将来的にお得意様となる人たちを呼び寄せてくれたのはもちろん、彼女の残した実績もその後の事業に多大なプラスの効果をもたらしてくれた。
なので、こうして結婚式に招待され、直接彼女に祝辞を述べられることは、少しでも恩返しできるチャンスがようやくとやってきた、という意味だけでもとても嬉しいことだった。
頼まれた役割は乾杯の音頭で、これも「来賓にプレッシャーを与え過ぎない」、という彼女の優しい心遣いだったと思われる。
なんたって当日、式場で維水志が知っている顔といえば、緑山のお母さんとその弟ぐらいなのだ。
「うん。乾杯の音頭の後は端っこのほうで静かに宴を見守っていよう」
そう思った。
ところが、当日、驚かされてしまった。
両家合わせて80人規模の、こじんまりとした素敵な式で維水志のポジションは主賓席。
主賓だけに、花嫁からその紹介があるわけだ。
「私が中学高校とお世話になった云々・・・・。維水志先生に出会わなかったら今の私はない。人生最高の恩師です」とおっしゃる。
なんか、涙が出そうになった。
緑山はいわゆる才女である。
そうは見えないけど才女。そう思わせないところに彼女の魅力が詰まっている、とも言える。
高校は県内一とも言われる県立の進学校。
高校卒業と同時にアメリカに留学。
英語はもちろんスペイン語もペラペラとなり、主席レベルの成績で卒業。
帰国後、超有名商社に就職する。
その辺りまではよく連絡をもらっていたのだが、暫く音信不通となった。
それで、久しぶりに連絡があったと思ったら、なんと商社を辞めてしまい、今は語学力を生かし海外支援活動で世界を駆け巡っているんだと言う。
驚いた。
才女だとは思っていたが、そこまでとは・・・。
やはり商社などでは彼女の器を閉じ込めておくことは出来なかったんだろう。
否、日本が彼女を国内に留めておくことを許さなかった。
そんな彼女に、「今があるのは維水志のおかげ・・・」なんて言われると、ちょっと、というか、かなりこそばゆい。
今思えば、おぼつかない、今とは比べ物にならないぐらいほどの恥ずかしい維水志のスキルだったにもかかわらず、彼女自身は最高の結果を出し続けてきた。
確かにそれは事実だが、それらはすべて彼女自身が元々持つ能力を駆使して得たものである、と維水志は今でも思っている。
だからこそ、社会に出てそれだけの活躍をし、それだけの人脈を得てきたのだ。
維水志でなくても他に立派な人はいくらでもいるだろうから、てっきり、主賓席は彼女が超有名商社時代にお世話になった大企業のお偉いさんで埋まっているのかと思った。
なのに、あれから十年以上経った今、自らの人生最高の晴れの舞台に、こうして維水志を「恩師」として最高の扱いで招いてくれたことが、維水志にとっては今でも信じられないし、何よりも嬉しいことだった。
そのように維水志にとっても思わぬ晴れ舞台になったイベントだ。
こじんまりと自営業をやっている今、仕事関連でそんな栄光とも思える日が再びやって来るだなんて正直夢にも思わなかった。
それだけに、「今まで仕事をしていて本当に良かった」と素直に思えた瞬間だったし、また同時に、これからも誇りを持って仕事に打ち込むための礎になるほどの出来事でもあった。
自らの人生最高の舞台で、人生最高のプレゼントを恩師に送るだなんて!
場所は箱根神社。
そんなスケールが大きい彼女の心を射止めたのは、これまた海外支援活動で活躍する超ビッグスケールな花婿。
同性の維水志から見ても羨むほどの器の大きさが感じられる。
これほどの器がなければ彼女と共に歩むことはできないだろう。
でかした、緑山!
満点だ。
人生のパートナーの選択でさえ、一点のミスもないとは!
式も無事に終わり、家族の記念撮影に維水志が入ることがとても憚れたが、そのように促されたので参加した。
そりゃ憚られるだろう。
だって、将来、彼らに子供が出来て、その写真を見るだろう。
そしたらそこに見たこともない顔が一人写っているわけだ。
そんな家族の大切な思い出の一部に軌跡を残すことになるのだから。
やがて披露宴が始まった。
メニューから席札に至るまですべてが手作りの、心温まる披露宴。
久々に大人数の前でしゃべる緊張感のせいで、柄にもなく緊張してしまったが、無事に乾杯の音頭を務めさせていただいた・・・、
と、思う。
やがて・・・、
なんと!
二人の門出を祝うかのように、辺りをも純白に包もうと雪が降り始めたのだった。
おお、緑山。
美しくなったなあ。
君も、維水志にとって最高の生徒だよ。
招いてくれて、ありがとう。
いい式だった。
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