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維水志ナイトメア 前編

このところ、YouTubeでラジオミステリーというかホラーなんか聞いてるもんだからかどーかはわからんが、昨日悪夢を見てしまった。

夢って普通、時間とか空間の概念がめちゃくちゃなのに、その悪夢は結構リアルだったというころもあり、はっきりと覚えている。

レム睡眠とかなんとか専門的なことはわからんが、きっと眠りが浅かったからに違いない。

珍しいから記録に残しておこうと思う。

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維水志はいつものように自分のオフィスで仕事をしている。

今日のセッションの顧客はフジタさんだ。

まあセッションってのは集団で行うものだから、正式にはセッションとは言わないんで、ここは便宜上、授業、と言っておこう。

フジタさんは、いつも授業の準備を怠らず、やるべきことをしっかりとやれる素直な女子高生である。

それゆえ、こちらとしても余計な神経を使わないで済む、とってもありがたい顧客だ。

そーいや、いつもこの授業は土曜のまだ陽がある時間帯だったと思うんだが、今日はもう外は真っ暗だな。

そんな違和感を抱きながら授業を進める。

順調に進んでいるのだが、先ほどからドアの向こうに人がいる気配がする。

狭いオフィスなので、ドアの向こうでも人が来ればすぐに気づく。

あれ?おかしいな?

次の授業まではまだだいぶあるが・・・。

進行中の授業が終わりになるころ、次の顧客が早めに来てドアの向こうの小部屋で待機していることはよくあるのだが、フジタさんの授業は今さっき始まったばかりである。

気になるので、教室の後方にあるドアに向かっていくと・・・、

なんと、ドアが少し開いていて、向こうから人が覗いている。

しかも複数いる。

ドキ、っとした。

え?だ、だれ?

両親とその子供二人、兄と妹、と思しき家族連れのようだ。

ああ、きっと授業の見学に来たに違いない。

「すみません。体験授業は予約をいただいてから行っていますので・・・」

と、伝えるが、なんか反応がないのである。

???

しょーがないんで、教卓に戻り授業を再開する。

まあそのうち諦めて帰るだろう。

夢だからか、ここら辺が不思議な部分である。

普通だったら気になってしょーがないはずだ。

ところが、そいつらが今度はいつの間にか教室の後方に入って来てやがるのだった。

子供二人は着席し、親は授業参観のごとく、その後ろに立ち、こちらの授業を無表情で見ている。

「・・・・、き、気持ち悪いんですけど・・・・」

明らかに授業の邪魔である。

「ちょっとごめんね」と、フジタさんに断りを入れ、そいつらにとっとと帰ってもらおうと近づこうとした瞬間、さっきまで後方にいたはずの母親と娘がフジタさんのすぐ横の席まで来ている。

つまり、瞬間移動していた。

で、無表情なのだが、何か言っている。

体験授業はお金持ちしか見てもらえないのか、とかなんとか意味不明なことをほざいている。

いやいや、予約をしてないとダメだ、ってさっき言ったと思うのだが。

そんな押し問答をしてたら今度は後方に控えていたオヤジのほうがしゃしゃり出てきてた。

母ちゃんに加勢するつもりか。

その通り、選手交代となり、なんか言いがかりをしてくる。

こっちゃ授業中なわけで、こんなやつらを相手にしている場合ではないのだが、と、フジタさんのほうに目を向けると彼女の姿が見えない。

教室に、教壇側から死角になっている部分があり、さきほどの母娘らと一緒にそこへ移動したようだ。

一体、何やってんだ?と、思ってオヤジを制してそちらへ向かうと、

なんと、母娘がしゃがんでしまっているフジタさんの頭になにかをしている。

「なにやってんですか!」

と、問うと、フジタさんがおもむろに立ち上がり、

「髪の毛にいたずらされました」

と言う。

「こ、こいつら・・・」

明らかに常軌を逸している行動。

絶対にヤバい。

とっとと追い出そうと思ったその時、オヤジが維水志を羽交い締めしてくるのだった。

オフィスは2階。

窓から逃げるわけにもいかん。

「け、警察・・・!」

警察へ通報するようにフジタさんに促す維水志。

か、体が動かん!

<つづく>

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