弾丸ツアラー 暗中模索のライディング
と、とりあえずハラ減ったからなんか食おう。
そーいや昼ぬきだったが緊張からか、あまり空腹感がない。
夜の牛タンに備えて軽いものにしておこう、とパンを購入。
「3気筒の振動」という思わぬ伏兵に出鼻をくじかれて意気消沈気味だった。
こんなことならBMWのF650GSにしときゃよかった。パラレルツインのエンジン振動はもちろんあるけど、ステップやハンドルへの振動はまるで感じなかったし・・・。
一方のタイガーときたら、ハンドルに軽く手を乗せるともうビリビリきているのだった。
しびれる手でパンをかっ込みながら思いを巡らす。
「待て待て・・・冷静に考えろ。
「Ninja400Rで初めて高速に乗ったときも手足の痺れが激しかったが今じゃもうそんなに気にならないじゃないか。
「やっぱ腕に力が入りすぎているんだ。もっと力を抜こう。
そうだ。落ち込んでいる場合ではない。
この旅はこいつと付き合うことに決めたのは自分なんだからなんとか良さを引き出さなければ。
15分ほどの休憩で蓮田SAを出る。
今度は着座位置をいろいろ試してみる。
すると、「お?なんか楽だぞ」という位置があった。それまでどうもNinjaと同じような座り方をしていたからだろうか、さっきまでいたかったケツの痛みがウソのようになくなった。
ケツの痛みが解決したところで今度は極力手の力を抜くことを意識した。
前傾姿勢のないタイガー800だ。楽に乗れるはずなんだ。
で、新発見があった。
バイクに乗るには腹筋が必要である。
下半身を脱力する。腕にも力を入れない。
するとどこに力が入るか、というと腹筋なのだった。
おそらく腹筋があればハンドルで体重を支えるということが極力抑えられ、首・肩への負担が減るのだと思った。
維水志がライディングで常に肩こりを発生している原因の一つに腹筋のなさ、があげられるのだ。
「こりゃこのツーから帰ったら毎日腹筋だべ」
そんなことを考えながら宇都宮を通過した。
やがて3車線から2車線になり、交通量もだいぶ減ってきていた。
ペースは100キロぐらいで巡航している。
那須塩原あたりが寒い。もう一枚中に着るものを用意すべきだった。
やがて第一休憩を予定していた出発から165キロ地点の上河内SAへ到着。
残り215キロである。
時刻は6時をちょっと回ったところ。
あと200キロを残して3時間近くあるならなんとか行けそうじゃないか。
しかもバイクから降りると、さっきの休憩のときほどの痺れがなくなっているじゃないか。
やった!勝った!
やっぱ乗り方がよくなかったんだ。
ここではメットをはずして軽いストレッチのみ。
あとは途中経過をマイハニーにメールで報告。
こうした報告により携帯に時刻が正確に刻まれるので後でブログに記すときに随分と役立つ。一石二鳥なのだ。
タイガー800にだいぶ慣れてきたのか、最初は遠慮がちだったペースもだいぶ上がってきた。
当初、休憩は285キロ地点の安達太良SAか340キロ地点の国見SAのどちらかにするつもりだったが調子がいーんでこのまま一気に国見へ向かっちまおうと思った。
ところが、だんだん日が暮れてきた頃、いきなりオレンジ色の明かりが目下に入ってきた。
「なんだ?」
燃料警告灯だった。
おいおい・・・・さっきまで半分ぐらいの表示だったじゃんか。
な、なんで急に?
そーいやレンタルバイク店のにいちゃんが燃料計が調子悪くて満タンでもFULLにならないとか言ってたくせに暫く走るとちゃんとFULLになってて、「あいつめ、やっぱこの車両の特性をなんも知らないんじゃないか!」とムカついたのだが、ホントに調子が悪いのだった。
けど意味が違うじゃんか。正しくは「半分ぐらいから急に警告灯が点灯する」だ。
こんな落とし穴があったとは・・・・。
とにかく急遽、安達太良SAで給油することに。
スタンドで「ここは・・・あだちたいら、でしたっけ?」と聞くと
「あだたらです!」と、ちょっと冷たく修正された。
ここで単身さんに一回目の途中報告を入れる。
時刻は7時半が近い。残す距離は100キロを切った!
やはりここでも給油のみ。すぐに出立。
もうすっかり暗闇になった。
そして順調に飛ばすが、ここで初めて震災の傷跡に遭遇する。
地震によって道路にできた段差の補修作業をいまだにやっているのだった。
「ああ・・・やはり復興とは言え、まだまだ先は長いんだなー」と改めて思わされた。
車線規制により平均速度が落ちる。
余裕はないぞ。
しかし、このタイガー800、まるでオートマである。
速度が60キロ以下まで落ちても6速でそのままフツーに走る。エンジンがガタガタ言い出すこともない。
それでアクセルを開ければそのままフツーに加速するのだ。これが3気筒の恩恵であり醍醐味だ。
車線規制がないときは時間を稼ぐため速度をさらにあげるが、これまた100キロからの加速も申し分なく、後ろから速いクルマが来ようが後ろにぴったりくっつかれるなんてことはあり得ないぐらいあっという間に引き離すことができる。
なので安心して右車線を悠々と走っていられる。
高速上で加速するためにギアを一段落とす、ということがこの旅ではほとんど記憶になかったぐらいである。
ちなみにどれくらいまでスピードが出るのか試そうとしたが、150キロを越えるとメットごと頭を後ろに持っていかれそうになるくらいの勢いなので怖くてやめた。
途中でやめる、ということは、このタイガー800、まだまだ余力を残しているということだから恐ろしい・・・。
やはりバイクは800ccもあればそのアビリティを十分味わえると感じた。1200とかあってもバイクが重くなるだけで無駄な気がするのだった。
一方、スクリーンの恩恵を受けているのかどうかがいまいち不明だった。
100キロだとエンジン音と風切音が半々ぐらいだが、120キロぐらいだともう風切音中心になる。
防音に優れていると思っていたアライのメットでもさすがに「ボゥゥーーーッ!」という音が激しい。
いまやライディング姿勢はじっとしてれば辛さを感じないぐらいになっているのだが、この風切音に疲れてしまうのだった。
やがて国見SAの標識が出てきた。時刻はもうすぐ8時。
距離45キロを残してあと1時間・・・・・どうやらやり遂げられそうなので最後の休憩に入る。
「や、やったあ、やったあ、やったあマーン!わぁっはっはっはっは・・・」
と、がに股踊りをしたい気分だったが、まだ油断できない。
力なくベンチに腰掛けた。
だが、ここでやっと写真撮影をする余裕ができた。
こいつが今回の相棒、タイガー800である。
ニーグリップのときにパイプが膝に当たるのだが、返ってそっちのほうがすべらずにグリップしやすいんじゃないかと思った。
ここで、家を出るときに出来立てホヤホヤで冷まさなければいけなかったベーグルの口を閉じて梱包作業を行う。
余裕ぶっこいて20分ほど休んでしまったが、車線規制があるとヤバい。高速降りてからでも得意の方向音痴が顔を出すとさらにキケンなので先を急ごう。
単身さんに最後の連絡メール「どーにか間に合いそうです」を送ってから出発。
案の定、車線規制があって危ぶまれたが仙台南出口が見えてきた。
最後に南部道路へ行かないようにだけ注意をし、暗記しておいた「左、右、左!」を頭の中で繰り返し一般道へ降りる。
時刻は8時50分をまわったところだ。
暗い、高速道路の下道を走りながら遠くに目指す明かりが見えてきた!
あった!ツタヤ!
待ち合わせ場所!
い、入り口、どこ?正面に駐車場らしきものが見えない。
時刻は9時5分前!
右折するも、入り口が見つからず、しょーがないんで出口専用から駐車場へ進入。
ツタヤは一番奥に見えた。
胸が高鳴る!
逆走するクルマを避けながら(おまえが逆走しとるんやないかい!)進む。
見えた!
カタナ!虎鉄!!
い、維水志、時間通り、つ、着きましたー!
初めまして、こんばんは!単身ライダーさん!
こうして380キロの道のりを無事に5時間で制覇した維水志なのだった。
ちなみに自宅からだと440キロでレンタル手続き時間等含めて7時間であった。
つづく。
↑最後まで読んで頂きありがたき幸せでごんす(@^0^@)
「よくぞまあ、無事で・・・」「本当に仙台に着いちゃったよ」などなど、いろいろと感想もおありでしょうが、クリックひとつ是非とも恵んでくだされ~o(〃'▽'〃)o