維水志のルーツを探る旅 その2
そんな殺伐とした中にあって、この公園はもしかして憩いの場であったのかもしれない。
・・・・・。
いやー、すぐ横がもう国道1号でうるさかったから、そーでもないか。
そうそう、この階段を上がっていくと、
こんなふうにちょっとした広場が現れるのだ。
ああ、あの木は切られずに今もずっとあるんだあ。
小学校卒業後、すぐに横浜に戻ってきた維水志少年。
つまり小学生時代につるんだ友達がいないため、実質、近所に知り合いがいない。
それで壁を相手にキャッチボールでもやろうと思ったのか、グローブを持ってこの公園を訪れるうちに、同じく草野球をやっている少年たちといつの間にか合流するようになったのだ。
たまにそいつらを指導する大人も交じっていたかな。
とは言え、全部で4,5人?
ピッチャー、キャッチャー、バッター、守備2、3人、みたいな。
こんな空間だから、軟式野球でもない。
確か、ソフトボールの小さいやつでやっていたような・・・・。
それでまあ新参者ゆえの照れくささからか、漫画の影響からか、ボールを投げる時に「シュッ!」と言っていたので、維水志に付いたあだ名が「しゅ」だった。
越してきて間もない頃だったと思う。
やがて中学校での付き合いが中心になるにつれ、そいつらと遊ぶこともなくなったが、維水志が中2になったら彼らが1年下の後輩で入学してきて、維水志のことを「しゅ」ではなく「先輩」と呼び、敬語を使っていたことに驚きを感じたものだ。
厳しい部活に入部していたわけではないためか、年齢による上下関係に縛られるのを極端に嫌う維水志少年にとって、後輩としての彼らの態度は少し寂しいものだった。
そんなエピソードがあるのもこの公園があったお陰だろうな。
そーいや、ここを徘徊しているホームレスっぽいばあさんがいたな。「公園ばばあ」と呼ばれていた。
それとか段ボールでいっぱいのリヤカーを引っ張って近所を徘徊する「神様」と呼ばれるじじいもいた。
なぜ神様、と言うのかはわからん。サケウチがそう呼んでいた。
日曜だろうが夏休みだろうが、子供を見つけると「学校へ行け!学校へ行かないと地獄に落ちるぞ」と意味不明な「地獄行き宣告」をしていたからだろうか。
そんな都市伝説的なやからが存在したのも下町ならではではなかろうか。
さて、もう少し近所を歩いてみよう。
確かあそこがお肉屋さんだった記憶がある。
7つ下の妹がおつかいに行くと、店主が「かわいいから」と言ってよくサービスをしてくれた。
ここで妹の七五三の写真なんかを撮ったはずだ。
ここの写真館は未だに健在なんだあ。
その近くにある神社。
ここで夏祭りが開催されていた。
この狭い空間に出店が立ち並んでいた。
こんな都会にあって、こーいった風景は変わらんのだ。
この神社に特に思い出はないのは何故だろう?
もう一つ、時が止まっちゃってるものを見つけた。
これだ。
今で言う、コンビニ。
そ、そのまま建物が残ってんのか?(;゚Д゚)
かすれた看板には「コンビニ」の文字がある。
ってことはコンビニ全盛期を迎えるころまでは営業をしていたのだろうか。
「萌一、パンと牛乳買ってきて!」
と、母ちゃんに命令されりゃすっ飛んでここに来たものだ。
店主は気さくなおばちゃんだった。
あちゃー。完全に時が止まっている。
昔からある街並みってのはみんなこんな感じに新しいものと古いものがアンバランスに入り混じっているものなのだろう。
通学路の一つに行ってみる。
面白いもので時期によって通学コースがいろいろと変わっている。
中学3年間のほとんどをサケウチと一緒に通学した。
柔道部のサケウチと、文科系の部活の幽霊部員だった維水志とじゃ全然生活のリズムが違っていたはずなのだが。
なにしろ維水志の実家とサケウチんちは歩いて数十歩の距離しかなかったから、きっと朝だけは一緒だったのだろう。
「維水志くーん!」
って、朝、サケウチが迎えに来る時の声が蘇ってくるよ。
通学途中にある近くの川。
こ、これは驚いた・・・・。
だって・・・、
川底が見えるし、鴨や魚が泳いでいるではないか!
昔はヘドロで水がよどんでいて水底が見えるなんてことは皆無だったのだ。
海が近いので干潮になると水位が下がる。そうなると川底近くのヘドロの山が顔を出し、夏場なんかは特に臭いが強烈で、とてもじゃないが近くを通る気にはなれなかったほどなのに。
そう。ちょうどあの下水が流れ込むあたりに大きなヘドロの山が顔を出すのだ。
サケウチはその山のことを「アトランティス大陸」と呼んでいたものだ。
今考えると笑っちゃうなあ。サケウチってのは発想力が豊かだよなあ。
謎の大陸、アトランティスだもんなあ。
そのサケウチが今じゃ高校の先生だってんだからさらにおかしくて笑っちゃうよ。
そしてそのアトランティス大陸が現れると、尻尾を除いても20センチはあろうかという、超巨大なドブネズミが大陸の中央に鎮座しているのをよく見かけた。
そんな川がここまで変貌を遂げるとは・・・・・。
一体、どーゆーメカニズムでここまで水質が改良されるのかしら?
下水が整備された、ってことだけ?
いやー、何もかもが懐かしい。
30分ほどの滞在だったが、1時間以上に感じられたのだった。
じゃあ次は名物商店街へ行ってみよう。
つづく。
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