電車・バスの旅の魅力
旅行前、2日目の計画を立案中にずいぶんと悩んだことがあった。
山寺から銀山温泉に向かう際、電車・バスの乗り継ぎがよくないためにどうしてもタイムロスが出るのだった。
途中の乗り換え駅、羽前千歳で1時間強待たなければならず、さらに大石田駅到着後も路線バスを20分近く待たねばならないのだった。
バスの20分はまだしも、おそらくは何もないであろう駅構内で1時間のロスは痛い。
ならば、と山形駅まで戻ることにした。
そこから新幹線を使って一気に大石田駅へ向かえば、山形駅で90分の時間が確保できる。
それだけあればお土産やらなにやらとちょっとした観光ができるはずだ。
そーえいばマイハニーが旅行直前に日程表を作ってくれた。
それがこれ。
これはニャンちゅう。
表紙。
妹と一緒に作ってた。一日で作ったとは思えないなかなかのできだと思う。
これのおかげで随分助かった。他のものをいろいろ見なくて済むので乗換時刻などが頭に入りやすい。
乗り換え時間が結構短いのもあって予定通り行かないのも多々あるだろうと思っていたが、ここまですべてきっちりと予定表どおりに進んだのは奇跡的だと思う。
特に夜行バスなんかはその距離が長いため、かなりのずれが生じる可能性があった。けれど到着時刻がぴったりだったのには驚いた。もちろん余裕をもっての予想到着時刻なのだろうけども。
話しを戻しましょう。
そーゆーわけで大荷物のコロコロも山形駅のコインロッカーに預けることができたのだ。
でーっかいロッカーでも8時間まで200円と、とても良心的なのでぜひとも利用すべきである。ちなみに山寺駅にも同等のロッカーがあったが値段は確認しなかった。
案の定、山形駅の駅ビルで試食とかしながらのーんびりとお土産を選べた。
こんにゃく専門店の前へ行くと、かわいいお姉ちゃんがあれやこれやと試食をさせてくれた。しまいにゃ売り物の1個100円の玉こんにゃくをからしをつけて食べさせてくれるほどの大サービスだった。
もちろんおいしかったからなんだけど、玉こんにゃくとそれを煮る醤油のセット、試食でおいしかったキムチをあえたこんにゃくをお買い上げ。
そうこうしてるうちに出発の時間がきた。
山形新幹線つばさ。
各座席コンセントつきなのがよい。今思えばここで少しでもカメラの充電をすべきだった。
30分ほどで大石田駅に到着。
・・・・・・。
新幹線が停まる駅とは思えないほどなにもござらん。
寒い。
うーむ。20分とはいえ、ここで待つのは厳しい。
そんな会話をマイハニーとしていたら
「銀山に行くの?」
と、声をかけられた。
「うん、そう」というと、続けて
「どこに泊まるの?」
「瀧見館。今から連絡すれば来てくれるかな?はは・・・」
なんだろう。どーもこーゆーときに「です・ます」調で返事ができないのがいみなしの特徴の1つでもある。
なめられてはいけない、と防衛反応が働くのか、無理矢理対等の立場へ持っていこうとしているのか、いずれにせよ「弱いイヌほどよく吠える」というのを連想させる小さい行為なので辞めたいとは思うのだが・・。
そんなわたしの横柄な態度にもかかわらず、その人は
「今からじゃきてくれなかろうよ。乗っけてってやるよ」
とおっしゃった!
「ホントですか!?」と思わず叫んでしまった。
この「ホントですか」も喜びと驚きの表現なのだが、聞く人によっては真に受けて「ウソなんかついてないよ」と気分を害される人もいる。これもまた辞めたいがクセなのである。
しかし他の宿のお客さんにもかかわらず乗っけてってくれるなんて!
山形の人の人情に触れた気がしてとっても嬉しくなったのである。
そうして送迎バスに乗らせてもらうと、本来のここの宿泊客であろう人が後から乗ってきた。
大きな三脚を抱えている。カメラマンらしい。
着座するなり我々のほうを振り返り、
「これなんですけど、いかがですか?」
と、なにやらパンフレットらしきものを手渡された。
銀山温泉の風景写真が表紙になっている。
「いかがですか・・・って、え?」それを手渡されたわたしはなんのことが意味がわからない。中身を見ろ、という意味なのか、このパンフをくれるってことなのか・・・。
釈然としないわたしに彼は続けて話しだした。
「この写真を撮りたくて兵庫県の明石から来たんですわ」
おー。ホンマもんの関西人や。
気さくやなー。いきなり話しかけてくるなんて・・・・。
彼の話しを要約すると、
昨夜夜行を乗り継いで今朝蔵王に着いた、そして樹氷を撮影し、その足でいまここいる、このパンフの表紙に載っている雪化粧の銀山温泉の写真が撮りたくて1年間お金をためてきた・・・
というようなことだった。
まあ関東人の我々としては「はあ、そーすかあ」と返すしかないわけだが、この出会いをとても楽しんだのであった。
「なんで銀山に来ようと思ったんですか?」等も聞かれた。
そう改めて言われると「やっぱり風情のある温泉街に来たかったからですかねー」とか彼の明確なビジョンと比べると随分とあいまいな返答になった。
バスの運ちゃん兼旅館の人も時々会話に参加してきた。
「いま、あそこに見えるのが鳥海山です。めったに見れることがありません」
へえー。そりゃあいいときに来たもんだ、といまさらながらそう思わされた。つい先日までは天気が荒れていたようだ。
蔵王よりさらに高くなった雪のカベに景色をさえぎられながら30分ぐらいだろうか、銀山温泉まであと数キロの標識が見えた。
我々の泊まる宿「瀧見館」は銀山温泉でもちょっとはずれた坂の上にあるため、今乗っているバスではそこまで行けないらしい。
なので途中までそこの四輪駆動のバスが迎えに来てくれているという。
ところが待ち合わせ場所に着いたものの「瀧見館」のバスがみあたらない。
間もなくバスが現れた。
迎えに来るなり「(ネットの)連絡欄にバスでいらっしゃるとしか書いてませんでしたので迎えに行きようがありませんでした」みたいなことを言っていた。
それってどーなのよ。
「駅に着くお時間がわかればお迎えにあがることもできますが」とか前もって伝えておいてくれたっていーんじゃね?
蔵王の宿だってスキーウェアのことでいちいち確認の電話をくれたのに・・・。
ここまで乗せてくれた「能登屋」の運ちゃんにはものすごく感謝したものの、肝心の自分たちの宿泊地がとても不親切な気がして少々嫌な気分だった。
それにしてもこーして別の宿の人の親切に触れたり、関西の人と話しができたりは電車・バスの旅でなければ味わうことがなかったろう。
クルマならば目的地まで他人と触れ合うチャンスなどほとんどないからだ。
これも電車・バスの旅の魅力の1つと言えよう。
そんなことが言いたくて一日分の記事にしてしまいました。
↑「さすが、ひっぱりの天才!」「自分が宿の連絡するの忘れただけだ」などなど、いろいろと思われたかたは、是非押してくだされ~(ノ^∇^)ノ